第一章・20話|自然素材、使い方では害になる - やっと出会えた本物の家

テーマはエコロジーな健康住宅

第一章・20話|自然素材、使い方では害になる

第一章・20話|自然素材、使い方では害になる

自然とつくと安心?それは怖いと思う。家をつくる時に使われる各種建材にもやたらと自然 の二文字が目立つ。

家づくりに大きな変化が見られるようになったのは、新建材といわれる材料が使われるようになってからだと思う。工業製品化による新しい複合材料が続々と生まれた。そして現在の家 づくりは、そうした新建材が多用されている。

素材の選択肢が広がり、内・外装とも多種多様になってきたことは事実だと思うし、住宅の性能が上がったり、施工性が良くなってコストダウンにつながったりした物もあったと思う。 しかし、居住者の健康を害するという開発当初は思いもかけないような結果を生むことになる。

室内に使われる建材には直接人間の肌が触れる。そして呼吸器を通じて体内に取り込まれる 室内の空気の質も、家をつくる時に使われる建材や素材によって決定づけられている。 

年々増え続けている化学物質の数に呼応して、新たなる化学物質が居住者のまわりにとりこまれてくる。そしてそうした毒性物質は、常温で気化するもの、温度が上がると気化するものなど、いずれにしても室内の空気を汚染することになる。

化学物質に囲まれた生活の中で、冬、ほとんど窓を開けずに暖をとっている状況を考えるととても恐ろしい。病気になってくれといわんばかりの環境だ。反対に夏だってクーラーをかけて窓を閉めていれば同じ状況をつくる。だから機械換気で計画的に換気をしましょうという、 計画そのものに無理のある機械信仰がまた登場する。そして窓は開けなくても良いですよ、ということになる。

機械換気の矛盾についてはすでに記している。今回は、安全と呼称している建材や自然素材 で家をつくりさえすれば健康な環境がつくれますという話のうそについて触れたい。

まず今言われている安全な建材の中にも厳密にとらえれば何がしかの化学物質が混入されて いるケースが非常に多いということ。また有害物質は基準値以下ですよという建材も多くつく られるようになってきたが、そうした材料ばかり使った場合、総量的に見れば安全と言えるのかとても疑問だ。さらに、基準値の設けられていない、また未知の化学物質についてはその毒性が判明していないし、内容がわからない分、不安も大きい。それでもでき得る限りの健康建材や自然素材で家をつくるということ、これはむしろ当たり前のことと思う。しかし、それだ けでは健康な住まいにはならないということを是非認識してほしい。何故住まいの中に農薬を はじめとするさまざまな化学物質が使われるようになったかを考えれば、一目瞭然。 ま

ずは湿気によるカビの発生やダニの繁殖を抑えるためだった。そのために農薬や殺菌性のある化学物質が使われるようになった。その原因は家のつくり方が湿気をこもらせる、いわば 風通しの悪い住まいとなったことにあって、家のつくりをそのままに自然素材を使えばまたカ ビやダニの問題がでてくる。悪循環でしかない。

考えてみれば細菌や虫から防御しようと、結果自らの健康を害していることになる。防腐処 理剤、防蟻処理に使われる薬剤しかり。家が完成した後に持ち込まれる防虫剤、殺虫剤、園芸用の各種薬剤、身のまわりには抗菌、殺菌された商品が山ほどある。

こうして持ち込まれたさまざまな化学物質に対し、吸着し脱着、ないし吸着し分解するような安全な機能素材の開発もこのところ後を絶たない。しかしそうした機能部材も吸着した化学物質を脱着できる環境で使われなければ意味をなさないし、吸着し分解する機能部材はその効果が永続するわけではない。建築後初期に効果を発揮するものであって、年々持ち込まれる化学物質に対しては効力を発揮できない。何年後かに交換ともなれば、大掛かりなリフォームとなってしまう。

湿気に対しても材料自身が湿気を吸ったり吐いたりする安全な建材が次々に開発されてきて いる。しかし、こうした機能性を有する建材は、使い方を間違えるとかえって結露を促進、カビダニの問題、住宅を腐らせる結果を生みかねない。壁下地などの材料が湿気を吸って、その湿気が抜けない状況にあれば、材料自身が腐食していく、壁構造そのものにも弊害をもたらすことになる。

自然素材や機能的な建材も使われ方によっては両刃の剣になり得ることを是非認識してほしい。そしてこうした建材の開発メーカーは、きちっと機能が生かされるような施工指導を行う責任があると思う。

ひところ開発メーカーは自分の商品そのものにクレームがつかなければ、他に悪影響を与えてもリスクを感じないものだとの話を聞いた。だから、新しい商品は何年か経って、問題が生じないことを確認しなければ採用しないという設計者や施工者がでてくるのである。

確かに慎重な目は必要だと思う。しかし昔からある土壁などの自然素材だって今の住まいづ くりの中で使おうと思えば、良さは生かされず、腐れの原因になりかねない。自然素材がその 良さを十分生かせた時代の家づくりの根本精神に立ち返れば、答えがでてくると思う。

 

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