第二章・9話|夏のパッシブな室内換気 - やっと出会えた本物の家

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第二章・9話|夏のパッシブな室内換気

第二章・9話|夏のパッシブな室内換気

パッシブな家は、室内空間と躯体内空間、その両方の風通しで構築されます。この項では、室内の風通しを、夏のパッシブな室内換気という観点から考えてみたいと思います。

気密化が進んだ現代の家では、日常生活における室内換気をどう行うか、考え方は大きく二つに分かれます。一つは20世紀の機械信仰のなごりと思える二四時間計画換気、そして、もう一つが自然換気です。

自然換気も二つに分かれます。建物の隙間を頼りとする成り行き換気と自然吸排気口による計画換気。いづれも論議が尽きないテーマですが、主に冬期間を中心になされています。

日本人の生活様式がいくら閉じきりに変化してきたとしても、まだまだ、夏は、窓を開けている時間の方が長いのではないでしょうか。しかし、このままの断熱気密の家づくりが進めば、クーラーと機械換気に頼った、閉じきり生活が定着してしまう危険性も高い、と思える時代になりました。現に、二年以上も窓を開けていない、と自慢するモデル住宅も現われているご時世なのですから。

パッシブな家は、クーラーには極力お世話にはなりたくありません。熱帯夜など、どうしても必要な時に少しだけという考えです。その観点から、夏の室内換気を見直してみましょう。

熱帯夜でなければ、夜間の外気は就寝するのに、そんなに暑くはないはずです。外気を十分に室内に流しながら睡眠がとれれば、明け方は寒いくらい、という状況もまれではありません。 しかし、防犯が日本全国必要になってしまった現在、おおらかに網戸で眠れる平和な暮らし、というわけにはいかなくなりました。どうしても窓はロックせざるを得ません。

それでもパッシブな家は、躯体内空間すなわち床下や壁の中、天井空間に外気が流れていま すから、熱がこもるということは少ないのですが、もっと自然の恵みをと思った時、室内も就寝時に風が流れたらとの願いは大きなものです。

幸い、パッシブな家は、中廊下で分断されない広がり空間の間取りです。風通しは、もともと抜群なのですから、窓を少し工夫すれば、その願いを叶えることは困難なことではありませ ん。

就寝時に窓を開けておける条件を考えてみます。大きな要素は二つです。

一、人が入れないこと。
二、雨が吹き込まないこと。

この二つを実現することは実に簡単なことです。

人の通れないサイズの窓にする。
雨の吹き込まない位置につける。

それだけの簡単なことです。しかし、実行するとなると、意外と難しいかもしれません。それは間取り上の問題です。十分な風通しを確保できるように、この換気用窓を設置する事前の設計計画が必要になります。

まず何LDKのプランでは、ほとんど不可能でしょう。最低限、平面的広がりが求められますし、願わくは、吹抜け等を介しての縦の広がりがあれば理想的です。その条件のもと、寝る場所などを考慮して、換気用窓の位置を決めていきます。

吸気用は下に、排気用は上へが原則です。上部の窓は開閉の容易さも考慮にいれます。閉じた時の気密性や断熱性も忘れないようにしてください。吸気用は、北側など日射で外気温が上昇しない場所に設定します。排気用は、吹抜けの上部や越屋根など、風下等で負圧になりやすい場所が適しています。

こういった条件を、いかにバランス良く設計におり込めるかが、ポイントです。もし、実現できれば、夏の間中、開けたままで暮らすことができます。まさしく建築的手法の室内換気ということです。

考え方は極めてシンプルです。とことん、設計時に考えれば、かなりの家に可能なことですから、真剣に取り組んでいただければと願います。

機械頼りからの脱皮、その小さな一歩です。

*2003年7月から機械換気設置が義務づけられました。しかし、ここに書かれている夏 の自然換気システムはそのまま通用します。

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