第一章・9話|小さくつくって、広々暮らす - やっと出会えた本物の家

テーマはエコロジーな健康住宅

第一章・9話|小さくつくって、広々暮らす

第一章・9話|小さくつくって、広々暮らす

小さくつくってひろぴろ暮らす、小さな家なのに、ゆったりした生活空間を確保する間取り のノウハウ、これは厳しい敷地条件の中で家をつくる、もしくは資金に制約がある場合に限っ て有効ということではない。もちろん、敷地にも資金にも余裕があって、大きな家がつくれる、 だから関係ないということでもない。

何故、敷地にも資金にも余裕があったとしても、結果として建築面積いわゆる坪数としては 抑えた間取りの提案をするのか。

まず、建替え、新築、いずれにしても今より、少しでも広い家をつくりたいとの願望。そし て広い家をつくろうと思ったら、家は大きくなるものとの間違った既成概念がありはしないだろうか。

家づくりに大は小を兼ねるの理論は通用しないと思う。だぶだぶの洋服がいかに自分らしくない、また身体の動きを制約するものか。また前の項でも触れているけれど、大きな鍋、これ も年齢を重ね、体力が落ちてくると重くて使いきれるものではない。

広い空間イコール大きな家では決してない、小さな家でも大きな空間はつくり得るというこ と。例えば、六畳ほどの部屋が全部個室で、それが10部屋も20部屋もあったら、確かに家 は大きくなる。ところが家の中の生活空間はどうだろう、とても、ひろびろなんて暮らせないことは一目瞭然。しかも廊下部分がやたらと増えて、生活できない空間のための建築費がかかるだけ。さらに最近は廊下を広幅につくりたいという要望が多い。

そんな時の回答は簡単。できるだけ廊下はつくらないようにしましょう、と答える。廊下は 個室をつなぐ動線。部屋と部屋を直接引き戸でつないで廊下をなくしたり、廊下に必要な空間 を居室にとりこんで大きなスペースをつくったりすれば、廊下をなくした分、家を小さくつく れる、そんな間取りの提案をしたい。

小さくつくってひろびろ暮らせる家づくり、その基本的な考え方から見てみたい。

まず、一年に数回しか使われない空間、しかも普段閉ざされた状態となるような部屋はつく らないということ。

応接や客間がどうしても必要だったら、普段は家族が使えるような空間にする、少なくとも家族空間と視覚的につながる空間にしておきたい。必要な時だけ応接や客間として成立するよ うに、空間を区分できる引き戸を設けておき普段は開けておく。

書斎や家事室なども同じこと、閉ざされた空間としてつくらず、リビングなどと一続きの空 間にしておく。個室にすればまた廊下が必要となってくる。

次に、何がしまってあるかも忘れているような収納物のためのスペースは設けない。 そして、掃除が行きとどかないような広さは求めない方がいい。掃除しない空間、イコール ほとんど普段使わない空間ということであって、それこそあってもなくてもよい空間というこ とになりはしないか。

最後に時の経過を踏まえたい。まずは、世帯主自身の20年後・30年後を考えた時、使いやすい、あるいは使いきれる空間になっているかどうか。

一人とか二人で暮らすのにいくつも部屋があっても使いきれない。おそらく一階での生活が ベースになると思うので、台所と食堂や茶の間、リビングがあればリビングも含めてワンルー ムにしておきたい。

一階で就寝するのであれば茶の間やリビング部分が将来の寝室となるよう、水まわりの動線 なども考えたところに配置しておけば良い。

問題は二階の子ども部屋。子どもが出て行ったままの状態になっているというケースは多い。もしくは広大なる納戸と化してしまっている。特に子どもが数人いる場合は、大きな空間を引き戸や家具などで使い分けできるようにしておく、子どもたちが共有できる空間は共有にし、できるだけ一人ひとりの部屋を個室としないでおきたい。


家族空間と子どものスペースは吹抜けでつなぐという間取りの提案をしている。さらに、子どもが出て行った後、子ども室の床板をとれば吹抜けが拡がるようにしておけば、一階で生活していてもかなりの開放感が得られる。

戦後の日本の一軒屋、それこそ続き間三部屋くらいに水まわりといった空間に、何人もの家族が生活していた。それは畳の間が融通性を持たせる空間であったということと、部屋を仕切る障子や襖の開け閉めによって空間を大きくも小さくも使えたことに他ならない。

日本の住まいの融通無碍さ、その良さを見直していくところから、小さくてもひろびろ暮らせる住まいが実現する。そしてその融通無碍さを失いかけている現代の住まいが、自然との結びつき、ご近所との人間関係、家族の紳に何らかの影を落としているといったら言い過ぎだろうか。

 

 

 

 

 

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