第一章・21話|美しい家、自然と共生する住まいをつくるには - やっと出会えた本物の家

テーマはエコロジーな健康住宅

第一章・21話|美しい家、自然と共生する住まいをつくるには

第一章・21話|美しい家、自然と共生する住まいをつくるには

最後に、自分たちの生活に合った間取りで、風通しや陽当たりも考慮されていて、かつ、美 しいデザインの住まいをつくるには、という内容でまとめたい。

家づくりの計画がまとまり、いざ着手。誰しも新しい住まいでの快適な暮らし、そして今不 満に思っていること、生活の不自由さなどが解消される期待で、ワクワクしてくる。とりわけ プランをああでもない、こうでもないとやっている時はとても楽しい。

ところがそこから家づくりをすすめていくと、丈夫な家や美しい家はできない。実際の家づ くりでは、むしろプランは後回し。まず、家のかたちから考えていく。敷地を見た時に、まわ りの環境と融合するたたずまい、陽当たりや風通しなど自然との関わりを頭に入れる。

そして隣家の状況や電柱の位置。窓の位置、ボイラーやクーラーの屋外機の設置場所、でき る限りの近隣への生活の配慮と陽当たりや風通しなども阻害しないよう、検討していく。もちろん法的規約はクリアーさせなければならない。

そこから建物の大きさやかたちの大枠が決まり、はじめて平面計画。1階と2階のプランへ 入っていく。そうすると、1階と2階の構造上の整合性もきちんととれ、しっかりした骨組み の家ができる。平面プランを優先させて、1階のプランの上に2階をのせると、2階の壁を受 ける構造が1階になかったりして、構造上弱い家ができてしまう。

恐ろしいことに、プロの設計でもこうしたことが起きている。多分、建主の要望を聞いて、 平面プランからすすめていき、どうしても構造のバランスがとれない、構造の整合性をとろうとすると、建主の要望が入らない、といったところだと思う。

それでも家は建つ。何とか構造上のずれをカバーしながら建てようとすれば、架構が複雑になり、手間がかかり、強度的にも万全とはいえない場合も多い。

家のかたちから入るというのは、自然や隣家との関わりを配慮し、屋根のかたち、そして外 観のデザイン、窓の位置などをイメージして、まずボリュームだしを先に行う、骨組みを先に考えると思っていただければ良いと思う。

そして家の美しさとは、いかにバランスのとれた骨組みをしているかで決まってしまうといっても過言ではない。人間の身体を考えても同じこと、姿勢の良い、健康的な肢体は、骨格で決まる。だから、プランができてから、結果として窓の位置が決まり、構造を考え、屋根をかけるのでは、バランスの良い、健康体にはなりにくい。

建主の要望をうかがって、平面的な考察だけでつくられたプランはろくなものがないし、ましてや敷地も見ないで提案されるプランは問題外ということになる。

陽当たりや風通しの良い健康的な住まい、構造のしっかりした家、そして美しいかたちの家 は、プランの段階で決定づけられてしまうということを建主側にも是非認識していただきたい。 そしてプランの変更は家のかたちから変わってくるということを踏まえながら、一緒に検討し ていきたい。

少しでも居住空間を広めようとか、無理して収納スペースをとらんがために、半間くらいを 増やしたりしたことで、外壁がギクシャクし、それにともなって屋根のかたちが不細工になっ てしまったりと、なかなかリスクは大きい。それでいて使い勝手が今一つということになれば やらないほうがましということになる。

美しい空間構成の住まいは、インテリアコーディネートなど考えなくても、それだけで美が成立する。照明だってシンプルなものであればあるほど映える。自然光が室内に上手に陰影を 落とせば、それだけで素晴らしい自然とのコーディネートが完成する。

壁も天井も漆喰で仕上げたシンプルな空間、骨太の構造材や丸太が室内にど-んと出てくるケース。いずれもどこか繊細さを感じさせられる空間をつくっている。おそらく設計の完成度の高さが、そうした繊細な空間をつくり得るのだと思う。そして、設計の完成度の高さは、も ちろん設計者の能力にかかってくるけれど、設計者の能力をそれ以上に引き出してくれるのは 建主であったりする。

自分たちの暮らしのかたち、何が大切なのかを本質できちっと見つめられ、しっかりしたイ メージを持って家づくりにあたっているご家族との出会いはうれしい。そしてこうした方たちは、とても良く勉強されている。

私たちに求められていることは、設計力、パッシブシステムとしての技術力、それを構築す る木材、素材へのこだわり、しっかりした伝統的な継ぎ手・仕口による建て方、大工をはじめ とする職人の技量そして現場管理能力などとなかなか厳しい。さらには家づくりに関わる人間 性が問われる。

このひとつひとつにきちっと応えられるべく、技とこころを磨き続けたい。

家づくり、トータルな技術力の上に住まい手とつくり手のこころの調和、自然との調和が実 現できた時、本当に美しい住まいが完結するのだと思う。

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