第二章・1話|家づくり、清く豊かに美しく - やっと出会えた本物の家

テーマはエコロジーな健康住宅

第二章・1話|家づくり、清く豊かに美しく

第二章・1話|家づくり、清く豊かに美しく

動機が不純では、同じ目的をめざしていても自ずと結果は違ってきます。

現代社会では、家づくりは大きな経済活動です。それは、個人の立場においても住宅会社や関連のメーカー、職人においても同様です。

二十世紀後半の大失敗。それは、経済活動をすべての中心に置き過ぎたことです。そして、さらに失敗を重ねたことは、経済活動の目的をストレートに金儲け、と単純化し、信じて行動してしまったことです。その結果、地球全体の汚染、多くの生命種の絶滅、子どもたちの身体 とこころに現われた異変、物は満たされても、こころの飢餓状態は増す一方……と際限のないくらい多くのマイナスを呼び込んでしまいました。

世界中が大きな転換に迫られています。それは、偉大な哲学者や科学者、宗教家や政治家だけの仕事ではありません。根底からの大変換は、私たち一人ひとりの毎日の生活からしか起こり得ません。生き方を見つめ直し、できるところから生活を変えていく、その連続の末、大きな変化が定着します。

二十世紀を振り返れば、私たちの多くが、物やお金にこころを奪われていたことは否めません。私たちは例外なく二十世紀後半のマイナス現象を引き起こした共犯者の一人なのです。

その地獄絵的状況からの脱出。そのキーワードが、「清く豊かに美しく」です。

私たちの多くは、哲学者や科学者、宗教家や政治家ではありません。いわゆる一庶民。その一庶民でも、毎日の生活を送っています。その毎日の生活を少しだけ変えることは誰にでも実行できることです。生活の根底にある考え方を少しだけ方向転換しましょう。

生活のものさしに「清く豊かに美しく」を採り入れてみたらどうでしょうか。 私たちの場合で言えば、家づくりを仕事にしています。その家をつくるという経済活動の原則を、「清く豊かに美しく」に置きました。その結果、経済活動にともないがちな本音と建 前、裏と表の必要性はなくなります。正直をベースに矛盾のない状態がつくれます。仕事でも、自分のこころを偽る必要はありません。

人間のこころにとって、こんなに楽な状態はないはずです。「清く」なれば楽になります。それなのにこれまでは、あえて苦しい道を選んでいたとは。 
 

「清く」はそういった働く人のこころの状態も示します。働くことは多くの人との共同作業で す。この人間関係が多くの喜びをもたらしますが、現実はそれ以上の苦しみを生みます。

この苦しみも、「清く」という考え方を上手に採り入れれば、かなり緩和されるでしょう。自分にとっても相手にとっても、「清い」、そんなこころのあり方を常に志向すれば人間関係にともなう摩擦係数はかなり減じることでしょう。

そして家づくり。この壮大で長期に及ぶ複雑な総合的作業の連続。 もしこの仕事が二十世紀後半の金儲け哲学に基づいて実施されるとすれば、不安の種は無限大でしょう。そして眼前の事実は、物金にまみれドロドロしている経済活動の一つ、それが家 づくり業界でも悲しい実態です。

私たちの家づくりは、そこから逃れたい、正直に仕事がしたい、働くことでこころの中に矛盾をつくりたくない、そして本質にかなったいい家をつくりたい、そんな思いが真先にあります。

「清い」家づくり。技術的にも、素材的にも、人間的にも。楽しく、こころが楽な仕事にしたいのです。豊かさは清らかさから得られるものです。

現代生活の物質的豊かさではどこまでも満たされません。持てば持つほど欲しくなります。 もっともっともっと……そして残るのはむなしさ。こころは物では満たされません。

家づくりの豊かさ、それは家づくりに関わるすべての人の「清い」思いから生まれるものだと思います。少なくとも一番の目的が金儲けでは、とうてい得られるものではありません。

「清く」が「豊かに」を導きます。家づくりに関係する人の数はかなりのものですから、そういった思いが徐々に浸透していけば、金儲け一辺倒社会からの脱皮に一役買うと信じます。

人間である限り、生身の肉体をともないますから、当然、物質的充足も必要になります。そうであれば、こころも同時に満たされる物質的豊かさを追求できたら、どれほど素晴らしいことでしょう。自分自身のこころを裏切らないで済む、本音と建前などの矛盾を生じない、そんな仕事のあり方が、もっとも求められているのではないでしょうか。

その清らかさから生まれる豊かさ、それが経済原則としてやがて定着していく。そんな夢を家づくりという仕事に託しています。そして実際に、かなりの部分で実行できるのも、家づくりという仕事のいいところです。

美しい家、それも大きな憧れの一つですが、それ以上に美しい生き方そして美しいこころ、に思い焦がれます。

「清く豊かに」生きてこそ、人生そのもの、その人も美しく映えます。 「清く豊かに美しく」にはそんな思いがこもっています。私たちが仕事をしていく上での テーマになっています。そんな風に生きよう、そんな健康な家づくりをしようと。

 

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