第二章・8話|夏は窓から熱を室内に入れない - やっと出会えた本物の家

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第二章・8話|夏は窓から熱を室内に入れない

第二章・8話|夏は窓から熱を室内に入れない

建築的手法で夏を健康に快適に、もちろんクーラーはめったなことでは使わない。そんな家づくりに憧れている方はかなり多いと思います。しかし、現実は各部屋ごとにクーラーが。

そんな物悲しい実態は、家の建て方が大きく変わってしまったことに起因することを、これまで述べてきました。

パッシブな設計、施工をして住居を夏向きに建てても、意外と窓のあり方を重要視していない方が多いようです。いくら、建築的手法で工夫をしても、窓からどんどんと日射や照り返しの熱を室内に入れてしまったのでは、涼しく快適な空間は望むべくもありません。

基本的にクーラーを使わず、窓を開けて風を通すことを、生活の前提にしている方は、つい、どうせ外気で室内の温度は上がってしまう、日射を直接入れようが入れまいが、あまり関係がないと思い込んでいる方も多いようです。

パッシブな家では、日射や照り返しを入れるかどうかによって住まい心地は大きく変わってしまいます。夜間の外冷気を蓄熱したパッシブな家でも、日中の通風で、壁や床面などの温度は徐々に上がり、やがて外気温と変わらなくなります。

しかし、直射日光が入れば、居住空間はすぐに外気温以上になってしまいます。例えば、日射が直接当たる床や壁面は、簡単に40℃程度あるいはそれ以上になってしまいます。その影響で室温も外気より暑くなってしまいます。

直射日光を居室にダイレクトに入れなければ、室温は外気の影響だけですから、徐々に上がり、通気や通風のいいパッシブな家であれば、タイムラグを除いて、外気温より上昇することは避けられます。よほどの熱暑でなければ、汗をかきながらでも何とか過ごせるはずです。そしてクーラーを使用する場合でも、効きは良く、省エネになります。

開口部から、直射日光を入れない。これを夏の生活の基本とすれば、パッシブな家においてはクーラーの使用頻度はグンと減るはずです。

それでは、夏、開口部からダイレクトな日射を入れない方法を考えてみましょう。

いの一番は、ずばり間取り、基本設計にあります。立地条件、家族数、住まい方などが許せる限り、直射日光や照り返しが入らないように、開口部を設けられれば言うことはありません。

この場合、意外と見落とされがちなのが、東面です。夏の朝日は、想像以上に厳しいもので す。朝日をダイレクトに室内に受けてしまうと、朝食時にすらクーラーが必要になってしまい ます。また西日は言うまでもないことでしょうが、照り返しも十分考慮する必要があります。 ひさし 庇などを長くして、直射を入れないようにしても、庭などからの照り返しの暑さは相当なものです。

同様に、ベランダや一階の屋根、場合によっては隣家の壁などからの照り返しは、なおさらに無視されてしまうようです。

これらの直射や照り返しを、間取りや基本設計段階ですべて避けることは、かなり難しいことでしょう。そうであれば、窓の設計の工夫を真剣にしてみましょう。

例えば、直射を受ける面はふさいで、違う面を開けるとかです。出窓を思い浮かべてください。この出窓が三角形に出ている、日射面は壁になり北側などをガラス面にする。もしくは凸 に出ていて、日射の当たりにくいサイドをガラス面にするなどの工夫は簡単にできるはずです。

また植栽で対処することもできます。落葉樹の利用は、昔から日常的に行われてきました。現代の狭い土地では、常にというわけにもいきませんが。

これらの基本的対処方法も採りにくい場合は、本格的に開口部の日射遮蔽を考える必要があります。日射遮蔽の大原則は、開口部の外側で処理をすることに尽きます。簡単な原則なのですが、現代の住宅においては、ほとんど無視されていることの一つです。

多くはブラインドとかカーテンでしょう。これらは窓の内側すなわち室内側にあります。直射を受けて、相当に高温になり、結果として、日射も遮蔽するが室内を暖めるストーブの役割になってしまう矛盾があります。

これを避けるためには、日射遮蔽の装置は開口部の外に、ということになります。最近では、外づけブラインドも各種発売されています。洋風であれば、オーニングという手もあります。

すだれよしず 日本の伝統を振り返れば、簾(すだれ)と葦簾(よしず)です。今でも、昔ながらの素材でつくられたものが手に入るのですが、すっかり使用されることは少なくなりました・簾掛けがきちっと施工されてい る家もほとんど見かけません。

こう見てきますと、いかに現代の家は、開口部の日射遮蔽に重点を置かずに、ひたすらクーラーに頼りっきりと思わざるを得ません。日射遮蔽を上手にしないとクーラーの消費電力もうなぎのぼりなのですが。

パッシブな家づくりは、開口部の日射遮蔽なしには考えられないと再確認しましょう。

 

 

 

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